Nikon D6 最高のカメラに最悪仕様の存在

BALEET[バレエ] PHOTOGRAPH[写真]

昨年(2020年)は、Nikonから舞台撮影においてプレアムとなる 120-300mmF2.8となるレンズが出て、私は月から飛び降りる気持ちで購入しました。
このレンズは2月に注文して、よし仕事して元を取り戻すぞっ、と思っていたのですが、3月になってコロナが来て、一気に仕事がなくなってしまい、ギョエ~って言う感じに…

追記(本記事の動画版も作成しました)

 

KidsDanceM「眠りの森の美女」 柄本弾(東京バレエ団)/佐藤優美(KidsDanceM)

Nikon D5 と120-300mmF2.8+1.4倍テレコン で撮った物です。

このレンズは、SR仕様になり、コントラスト・解像度共に200-400mmF4と比較しても、レンズ性能・機能共に恐らく、Nikonの中でも歴代の中でフラグシップになったと思います。

同時期にNikonは恐らく一眼レフカメラとして最後のフラグシップだろう思われるD6もリリースしました。

レンズの方は、仕様のみで購入を決意しましたが、予算との関係もありしまたが、D6の方は、既にD5以上の機能は不必要と思っていました。
しばらくしてから、1度は触ってみる事にしました。
Nikonのプロサポート事務所において1時間ほど触ってから、これは、ウムムと思っていました。

Nikon D6は一眼レフとして最後にして最高のカメラだった

外観に関しては、ペンタプリズム部分が少し大きくなった以外は、全てがD5と同一です。私が求める機能は、一点のみです。
シャッター周りの性能だけです。
私の仕事として一番重要な性能は、シャッター性能です。
シャッター性能として必要な要素は以下に分解されると思ってます。
A.人の意志に反応する物理的なシャッター・レスポンス性能
B.シャッター押下のタイミングで得られる画像に遅延の少なさ性能
C.シャッター押下後のブラックアウトレス性能

それ以外の要素は従来D5で十分と感じていました。

A.人の意志に反応する物理的なシャッター・レスポンス性能

シャッターを人の意志に応じて自由に切れる事というのは、どんなカメラでも出来そうと思うかも知れませんが、これは全く違います。
我々の仕事というのは、1カットで次々と舞台で繰り出されるシーンを切り取って行く事です。
ジャンプのグランバディシャや、男性のデリエールバッチュの足を打った瞬間は当然として、場合によっては、ピルエットもザンレールも1カットで撮る必要があります。
簡単なテストであれば、シャッターで三三七拍子を表現できる必要がありますが、最近のミラーレスでは、なんとかできる機種はありますが、ほとんどの機種において十分にできません。
→ 動態撮影が得意とする40万円、80万するミラーレスでも十分にはできません。
Sonyのミラーレスカメラのシャッターは、電化製品のスイッチレベルと評価する人もいます。
Nikon Z50という可愛いカメラでさえNikonではシャッターを大切にしている思えます。

B.シャッター押下のタイミングで得られる画像に遅延の少なさ性能

これは2021年3月現在、ミラーレスでは到底得られない物です。
D5でも、極端な話し、バレエレベルで行けば、ほとんどのパは、タイミングを計る必要はなく、ファインダーで見てからシャッターをきっても問題ないレベルです。
ミラーレスでは、シャッター押下のタイミングで得られる画像には遅延があり、その差を撮影者がタイミングを計って撮る必要があります。
これは数千枚を撮影するレベルから言えば、撮影者に苦痛を与えて、品質の良い写真を沢山撮るという事に関しては、使えないものです。

但し、ここの性能を感じているカメラマンというのは、スポーツ系カメラマンの中でも極極一部の人達だけと思いますので、一般カメラマンには不必要とも思える性能かも知れません。
スポーツカメラマンの中でも、被写体の動きが線形に動くモータスポーツなどでは、ミラーレスでも良い場合があります。
既にこの部分で、光学系ファインダーのカメラというのは、業務機というレベルになり、電子ファインダーであるミラーレスが一般カメラとなってしまったのが、現代のカメラ事情だと思ってます。

C.シャッター押下後のブラックアウトレス性能

シャッター押下後には、被写体を追い続ける作業がカメラマンに必要です。
Sony α9系が実現しているブラックアウトフリーという機能、いわば従来光学系カメラのペリクリミラー式に近い物で一番良いのですが、これに関しては、α9の性能が一番良いと思います。

D5レベルの通常シャッター(静音モードと比較すれば)であれば、結構なレベルで普通には問題ないレベルですが、音の問題で使用する静音モードでは結構ブラックアウトが多めです。その日の体調によって、ブラックアウトが気になる場合があります。
これは体調というか、歳のせいもあるかと思ってます。(>_<)
一眼レフ機であれば、D5の通常シャッタはブラックアウトが少ない機種だと思います。

この3要素を主として、NikonのD3Sから初めて、D4,D4S,D5と買い換えてきました。
さすがにD5で、自分が求める性能は、もう必要ないだろうと思っていたので、D6が出ても、購入意思ははっきり言ってありませんでした。

そして、1時間ほどD6を触った感触として、ウッ! と思いました。
私は、自分の仕事カメラに関しては、基本的に数カットシャッターを押しただけで、購入対象の否かそうか、わかりますが、D6の場合
シャッターの全てのフィーリングが、最上級。
シャッターきった時の振動が今までで一番よく仕上がっていましたし、なんと言ってもびっくりしたのが、シャッター押下後のブラックアウトが極端に少ない。
これは、言い方は変なのですが、光学式一眼レフ機でほぼブラックアウトレス状態を作り出したと思いました。
指連射しても、ブラックアウトが非常に少ない、更に静音モードでもブラックアウトを減少させている。
これは、とても良いと思いました。
昨年触らして頂き、更にNikon最終一番レフ機との思いもありましたので、今年になってようやく資金面がなんとかなったので、購入致しました。

イマイチ信じていないのは、昨日、ニコンから次のミラーレスとして、D6を追い抜く性能を持った物を現在開発中で今年中に出すとの言葉。
ミラーレスで、本当にそういう物が出たら、今のD5 /D6は全て、その機種に買い換えます。

が… 今までどのメーカもそんな機種は出せていませんので、フラグシップミラーレスは、かなり慎重にして、借りて写してから決定しようと思っていますので、それまでには時間がかかるだろうとも 思っています。

その他D6には、AF性能が飛躍的に革新されているようだし、一般の人達にはこちらの方にメリットを感じるかも知れません。

AFに関しては、Sonyミラーレスを筆頭に言われるような事がありますが、あれはかなり眉唾ものと思っています。(私は過去にSony機もα9を含めて2機種持っていました) 初動AFが遅すぎなのです。Nikonの方は、車で言えば、トルクがあるAFなので、こちらの方にメリットを感じます。

D6で初めて改善された操作性に関しては、今まで、AFモード(AF-S/AF-C)の切り替えは、両手を使わないとできなかったのですが、これが右手だけでできるようになった事が、私的にはとてもうれしいポイントです。

と言うのも舞台写真では、カメラを遮音目的の為にカバーで覆うので、両手の使い方には、制限を受けます。
できれば、シャッターをきる右手だけで、それを変更できたらといつも思っていたのが、今回でようやくできるようになりました。

恐らく従来からのユーザ意見をとれ入れて、最後に追加した機能だと思います。

最悪の仕様変更

従来ユーザの操作性を極力取り入れて、仕様を追加するというスタンスのNikonとして、今回、私にとっては、唯一Nikon史上最悪の仕様変更がありました。
事前に知っていたら、D6の購入さえ躊躇したかも知れない物です。

ファインダー内水準器の表示が最悪仕様に変更された

我々舞台カメラマンの多くは、カメラを縦位置・横位置を舞台の演技内容によって、変更して使って行きます。

特にバレエの舞台では、次々と演目が変わって行きその都度、素早く縦位置と横位置を変更しなければならず、また、縦横位置変更によって、カメラの水平を取り直さなければなりません。

D5までは、ファインダー中央内に明るく表示される、ファインダー内水準器を一時的に表示して、カメラ水平を確保していました。

特にバレエの舞台では、個人で踊る物は縦位置、複数人に踊る場合には横位置で撮るのが基本になっています。

個人と複数人で踊る曲というのは、それが一連の流れで続く場合もありますが、多くは、1度曲の区切りが入ったりします。

舞台では 暗転 で場面切り替えする事が多いです。

そして、我々カメラマンは、その暗転時に、カメラの縦横位置切り替えを素早く行うのが普通です。

ところが、今回のD6で初めてのその仕様が変更されて、それが適切にできない事になるというとんでもない 改悪仕様 となりました。

以下にファインダー内水準器の例を実際に、部分的に写真に撮ってみました。

背景が明るい場合の水準機表示

水準器として 黒い■が続いている箇所が、カメラ内水準器を表しています。
カメラは、敢えて傾けて撮っています。
水平がとれていると、この黒いバーはなくなり、真ん中の一点のみとなります。
この状態の表示であれば、問題がありません。

背景が明るい場合は使えます。

さて、舞台の暗転時を想定して、背景の明かりをなくした状態です。

拡大して詳細に見れば、うっすらと水準機表示は見えますが、通常では見えません。

背景が暗い場合は ファインダー内水準機は使用できないのです。

なんたる事でしょうか。

この事は、他のD6のユーザも同一問題視しています。
これは、改悪仕様のなにものでもありません。
全く 設計仕様バグ と言っても過言ではありません。

暗い場合には、縦位置と横位置を変更するな! と言う事でしょうか。

また、上記暗転というのは、舞台ではしばしばありますが、通常の撮影時においても、ファインダーの周辺が暗い・黒い背景というのは、存在しますし、この場合も非常に使いがたいものです。

改善提案

Z1.ユーザが水準機の色をあらかじめ設定しておけるのがベター。
最低元でも 黒と白 表示が選べて当然だと考える

Z2.現状の黒四角の周辺に白い枠を入れておいても良い。

Z3.極端な話し、水準機表示に関しては、従来D5までのように、ファインダー中央部に赤く表示させるのを復活させる。

などの対応が必須と考えています。
こういう改悪仕様のものを、最終一眼レフ機として、Nikonは残すのでしょうか。
私としては、非常な汚点と言うべき事です。
本当に情けない事です。
ファーム改善等で修正すべき内容です。