Summer Dream 創作バレエ(Aile)

[演目]
Summer Dream ~未来への協奏曲~ 創作バレエ
バレエ教室の発表会で演じられた物ですが、
情熱の都/希望の街/初恋の小路/追憶の丘/嵐の谷/ひまわりの道へ
という小タイトル毎に、群舞+ソロが踊られて行きます。
その作品の終わりのポーズです。
[主催者]
相模原市にある バレエスタジオ エル(Aile)さん。
今年で4年目くらいだと思いますが、主催者がイメージ豊かな方で、物語のある創作バレエに特徴があります。
主催者のイメージが、うまく生徒さんに伝わっている事が感じられました。
[写真的考察]
D3S + 200-400mmF4
発表会終盤のエピローグの最後のシーンです。
時折こういうシーンがありますが、実際的には、これの半分くらいの明るさだったでしょうか。
このポーズを撮って照明暗転。
この手の物は時々、照明がいきなり暗転になってしまったり、写真を撮影するタイミングがない場合もあるので、早めに押さえの写真を撮って、照明がじょじょに暗転して行く中で、良い感じの所をもう一枚撮影するのが、仕事としての安全な撮影と考えます。
生の舞台ですから予期しない事も発生します。
そういう予期できない事も、推測の範囲内にして仕事をして行く事が撮影の仕事という物だと考えています。

こういう物はイメージ的な写真にする事もできますが、発表会の写真ですので、個人毎のお顔がきちんと確認できるように、撮影・現像する必要があります。
見ての通り、スポットライトの中心にいる人はきちんと顔に照明が来ていますが、前2人には照明が来ていません。
これを救う為には、現像段階で最高輝度にある所と、照明の来ていない人の顔の輝度をバランスよく、明るさを再配置致します。

重要な事は、カメラまかせにせず、カメラマンが望む写真を作成するという事が、バレエの写真に関しては必要なのです。
バレエは元々非常に厳密な物です。
そういう厳密さに負けないように、更に厳密に正確性を元に撮影すべき事がバレエ写真なのではないでしょうか。

ジゼル 2幕から 全景

[演目]
ジゼル2幕から。

[主催者]
バレエ教室 スタジオアン さん。

[写真的考察]
D4 + 70-200mmF2.8VR2
ジゼルと言えば、白鳥の湖第2幕湖のほとりと同じく、青のイメージが強い演目です。
発表会では出演者の踊りを見せる事が、そのバレエ演目のイメージを表現する以上に大切だと思っています。
よって写真もあまりにも青々した雰囲気でなく、そこに見えるダンサーの肌色をある程度考慮しながら、元のジゼルの青のイメージを再現する事になります。
プロ公演であれば、より舞台上のイメージを強めて、肌色の再現は弱くなりますが、それでも肌色と舞台イメージの青とのせめぎ合いの中で、現像作業を行っていく事になります。こういう色の見せ方などは、幾ら現場での色温度を変更しても、到底現場でのJPEG一発撮りではできない作業です。
というのも、色に関する箇所は、色温度、色合い、輝度をセットとして相互に依存している事、及びカメラのモニタではそれらの微妙な変更も含めた場合、現場作業でできる事ではないのです。
厳密性を求めれば完全にカラーマネージメントされたモニターの元での現像作業が必須となってしまいます。

RAWで撮影するから、撮影時の色温度は適当で良い。
という考え方もありますが、特に、青のイメージの写真を撮影する際には気にしておくべき事があります。
通常の舞台撮影時の色温度は、2900k~3200kくらいの いわゆる電球色モードが標準になります。
しかしながら、この色温度で青のバレエを撮ると、そのモニターに映る色は、真っ青となってしまいます。
また、白チュチュ等も階調オーバとなり気味で、露出の確認に失敗する事が多くなります。
この為に、青のイメージを晴天モード(4500k~5500k)くらいで撮影して、撮影時には色よりも、適切な露出及び階調が保たれている事を確認するのが、大切です。

適切な露出で撮影されたデータを、現像段階において、厳密な色出し作業を行うのが、青イメージ写真の定番の撮影手法になります。

ジゼル 子供達の全景

[演目]
ジゼル1幕から。
発表会で農民達の踊り部分を、子供達の群舞として踊られています。
[お教室名]
横浜にある スタジオアン さん。
[写真的考察]
D4 + 70-200mmF2.8VR2
バレエの群舞の終わりでは、写真のように全員でポーズを付けて終了というパターンが一般的です。
舞台写真では、撮影位置が固定されますので、基本的には観客席の後方からの撮影になります。
各種条件を考慮して、撮影位置の最適な場所があります。
基本的には、レンズの焦点距離70mmで、舞台の全体を撮影できる位置がベストポジションになります。
この場合、全景からグループ(2間分の長さ)撮影に関しては70-200mm、更にその上としての小さな子供一人を撮影する為に、200-400mmクラスの焦点距離の2本のレンズで、全てが撮影できます。

更に写真のような全景を撮影する場合には、ピント範囲を確保したい為に、できるだけ絞り込んで撮影する事が望まれます。
実を言うと、全景を撮影するというのは、個人を撮影するよりも、色々と考えるべき要素が沢山あります。

ピント範囲を拡大する為に、シャッター速度を落とす事もありますが、手ブレ・被写体プレを考えるとそれほど低速シャッターは使えません。
そうすると、ISO高感度にして撮影する事になりますが、個人の顔の表情までしっかり撮影する為には、ノイズを考慮しなければなりません。
ノイズを考えると、カメラとしては良いカメラが必要で、ノイズ処理のうまい現像ソフトでの現像が必要となってきます。

通常舞台演目中の照明としては、舞台後方の照明が明るくない場合が多いので、単に撮影しただけでは、後方に配置された被写体が暗くなり、適切な全景写真には難しい形となります。
この写真においても、後方の子供達に照明が来ていなかった為に、現像時にかなり暗い部分を明るく処理しています。
舞台写真においては、ダイナミックレンズのコントロールがかなり必要になってきます。

全景写真に関して特に、JPEGのような現場での撮りきり写真という事は、発表会では考えられません。
もちろん、プロの演じるバレエ公演では、ダンサーの一人の一人の表情というよりは、全体としてのイメージを伝える方が重要となりますので、
その場合には、JPEG撮りきりの写真でも良い場合があります。

プロの公演と、発表会写真では求められる物が違い、それに対応してカメラマン側の作業も異なると考えるのが普通だと思います。